旅の途中、ふと空を見上げた俺は、中秋の名月を眺めていた。月の光は、旅における無言の相棒だ。知らない土地でも、その光を見るだけで、どこか安心することができる。光に照らされた山道や海辺、風が囁くように、月はいつも俺に何かを語りかけている。
北海道美唄市出身の佐藤康行氏のベストセラー『満月の法則』を思い出す。この本が語るのは、月が本来常に丸いように、俺たちもまた、初めから全てを持っているということだ。だが、時にはその一部しか見えず、それを「欠けている」と錯覚してしまう。しかし、実際には何も不足していないのだ、とこの本は教えてくれる。
俺はこの満月の法則を旅と重ねて考えずにはいられない。人はしばしば、自分に何かが足りていないと感じながら旅を続ける。欠けた部分ばかりに囚われて、目の前にある本当の豊かさを見逃してしまう。しかし、旅の本質は、自分の中にある「満ち足りたもの」を見つけ出すことではないだろうか。
旅の中で感じる焦燥や孤独も、その「欠け」に対する不安から生まれるのだろう。果てしない空や海、遠くに続く山々。そして、その先に何かを探し続ける俺たち。しかし、旅の最も大切な瞬間は、その過程で見つける「満ち足りた部分」に気づく時かもしれない。見えなくても、そこにあるものを受け入れる旅だ。
旅の終わりに振り返ると、満たされていないと感じた瞬間が、実は俺を成長させる道だったと気づくことがある。満月は、いつもそこにあったのだ。ただ、俺たちがそれに気づくかどうか、それだけの違いなのである。