はぐれ道中~旅情編~

時の止まる場所でどっぷり浸る、懐かしさと癒しの旅路

博打の美学(2)平和島のマルキン

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博打というものは、単なる金銭のやり取りではなく、その背後にある人間模様や瞬間の判断、そして時に風変わりなキャラクターとの出会いによって彩られる。平和島競艇場に足を運ぶ者にとって、予想屋マルキンの存在はその一つの象徴だ。

マルキンの江戸弁での軽妙な語り口、選手にまつわる小ネタ、そしてその場の空気を沸かせる巧みさは、まさに娯楽としての博打の魅力の一端を担っていると言えるだろう。

的中率がどうであれ、マルキンの予想は百円。賭け金のようであり、どこか大道芸に投げ銭をする感覚にも近い。その場の雰囲気を楽しみ、ひと時の緊張感と笑いを共有する。それもまた、博打の哲学であり美学である。

マルキンの口上は、もはや平和島競艇場の風物詩と言っても過言ではない。単に予想を述べるだけではなく、作り出される独特の空気感、笑いと知恵が交錯するその場の雰囲気は、舟券を買う行為以上の楽しみを提供している。マルキンを目当てに足を運ぶ常連客も少なくないだろう。その口上は、競艇の緊張感を和らげつつ、同時に賭けに対する期待感を煽り立てる巧みな芸術と言える。

博打の哲学というものは、時に「勝ち負け」を超えたところに存在する。予想が的中するかどうかではなく、その過程でどれだけ楽しめたか、そしていかにその場の空気を感じられたか。マルキンの口上がその場の「名物」として定着しているのは、その独特の楽しさと、博打の奥深さを感じさせるからに他ならない。