人生と旅路(5)人生の終わりから見えるもの
手術台の上に横たわったとき、俺は初めて、これまでの自分の人生が逆再生されていくような感覚を覚えた。
未来の目標を描こうとするとき、多くの人はいつも目の前にある損得勘定や我欲にばかり目を奪われる。
しかし、本当の目標というのは、もっと先、もっと遠くにある終着点から逆算してこそ見えてくるものだ。
現状からではなく、終わりからスタートすべきなんだと、その瞬間、痛感した。
数か月間、背中の痛みに我慢していたが、心臓の手術を受けることになったのは去年の12月だった。
入院中、深夜に他の病室から響く患者の唸り声が、妙に耳に残った。俺も、このまま終わるのかもしれない――そんな恐怖がよぎった。
もしあのまま命を落としていたら、俺は人生に満足していたのだろうか?「いい人生だった」と胸を張って言えるのだろうか?その問いが、俺にとって最も大切なテーマになった。
人は誰でも、自分の死を避けようとする。だが、死を目標に据えてこそ、本当の生き方が見えてくるように思う。
手術が終わった後、俺は主治医に相談し運動療法や食事療法に取り組むようになった。単に健康管理のためというより、自分の生き方を整えるためだ。
死を見据えて生を考えると、毎日の一歩一歩が違って見えてくるようになった。
旅もまた同じだ。
行き先が見えていなければ、どれだけ美しい風景が目の前に広がっていても、ただ漂っているだけになる。
だが、目的地をしっかり定めた時、たとえ道に迷うことがあっても、その迷いすらも道の一部になる。
どんな旅路も、終わりがあるからこそ、その過程が意味を持つ。
旅の地図を描くには、まず終着点を知ること。それは、人生と同じことだ。
終わりを見据えた時、初めて今日という日が輝きを持ち始めるのだ。