はぐれ道中~旅情編~

時の止まる場所でどっぷり浸る、懐かしさと癒しの旅路

人生と旅路(9)道を歩む

台湾・花蓮市の松園別館から眺める海

物質的な豊かさや経済的な成功──それを追い求めることは、誰にとっても自然な欲求だろう。俺だって、そんなものに少しでも近づけたら、と思わないわけじゃない。

だが、それが即座に幸福や精神的な充足に結びつくのかと考えると、どうしても疑問が残る。

物質が満たされれば、心まで満たされる、という単純な方程式にはどうしても納得できない。

もちろん、金銭や社会的な地位を求めること自体は否定するわけではない。人は皆、何らかの形で成長を望み、その過程で生きていくものだから。

けれども、その成長の指標が物質的な価値に依存し、外部の評価だけに軸足を置いている現代の風潮には、どうにも違和感を覚えてしまう。

俺にとって本当に重要なのは、自分自身とどう向き合い、心の深部で何を見出すか、つまり内面的な成熟だと思う。

今の社会は、物質的な豊かさを最優先に掲げ続けている。だからこそ、俺は物質的な成長に囚われず、内面的な豊かさを求めて旅を続けたい。そうして歩んでいく中で、俺自身の人生観をさらに深めていきたい。

以前、台湾の花蓮市へ行った時、台湾の友人が俺を松園別館に連れて行ってくれた。

ここから神風特攻隊が出撃したことを知った時、日本の愚策によって命を落とした多くの若者たちのことが頭をよぎった。

あの時、彼らが自らの意思に関係なく、天皇陛下万歳と言って死に追いやられたことに思いを馳せ、俺は心から、そんな過ちは二度と繰り返してはならないと強く感じた。

物質的な繁栄がいかに大切だとしても、精神的な成熟や平和を犠牲にしてはならないのだ。