味わいの旅路(16)青春の味と、未だに残るあの日の敗北感【五丈原・札幌】
予備校時代、札幌で過ごした俺は、週に三度は「五丈原」の暖簾をくぐったものだ。あれから30年が経った今も、あの店は変わらず激戦区で繁盛している。
俺がいつも頼むのは「とんしお」ラーメンだ。豚骨ベースのスープに塩味の繊細さが加わり、見事なバランスを保っている。五丈原といえば、とろけるチャーシューも外せない。受験勉強で疲れた深夜に、チャーシューおにぎりをかじりながら過ごしたあの頃を思い出す。そのおにぎりの味は、今も昔と変わらない。
チャーシューの脂はスープに深みを加え、そこに海苔の香りがふんわりと漂い、全体が一つにまとまっていく。昔は、デフォルトで茎わかめも入っていて、あの食感が大好きだった。今はもう茎わかめは入っていないが、きっとそれも時代の流れだろう。何事も変わらないものはないと、俺は理解しているつもりだ。
結局、俺は大学受験に失敗した。五丈原に戻ってくるたびに、あの敗北感から今も逃れられない自分を見つけたりもする。だが、そんな俺を五丈原の「とんしお」は変わらず温かく迎え入れてくれる。茎わかめは無くなっても、あの一杯の中にある優しさは変わらない。それが、今も俺を五丈原へと足を向けさせる理由だろう。
シンプルでありながらも、深い味わいが広がる「とんしお」。五丈原のスープの温もりが、俺の過去と今をつなぐ。